広大な国土と日本の10倍以上の人口を持つ大国、中国で今、バスフィッシングがブームの兆し? 5月に中日韓アジアバスプロカップの取材で訪中した際に感じたことをまとめます。(報告○アングリングバス編集部 田沢)
私と中国の接点は子どもの頃に読んだ横山光輝の『三国志』のマンガと中華料理が好きなことぐらい。中国語もほとんどわからないし、元々、そんなに接点はなかったのだが、ここ数年、機会をいただいてJB関連の仕事で年に1回ペースで訪れるようになった。
感じるのはよくいわれる圧倒的なパワー。どの街にいってもとにかく人が多い。これはアジア諸国には共通していることかもしれないが、中国の都会は輪をかけて活気に満ちている。同じ街でも訪れるたびに活気を増していっているような気すらする。名前も聞いたことがないような都市でも100万人以上の人口を抱えていることもざらだ。
バスは食料魚かつ高級魚としてポピュラーな存在
中国のスーパーを訪れて面食らうのが、鮮魚コーナー。日本では海水魚が、パック詰めされたり、氷の上に並べられていたりするが、中国では水槽に入って「活き」の状態で売られている。


幸か不幸か私はまだ見たことはないが、バスが水槽を泳いでいることもあるそうだ。しかも、バスは高級魚。中国料理ではソウギョやコイを食べることも多いが、バスはそういったコイ科の魚より高い。中国語では「魚」と「余」が同じ発音なので、「財産などが“余”る(=魚)ように」という意味で、お客さんに魚を振る舞うことがいいこととされているが、バスをごちそうしたとしたら、それはかなりいいもてなしを意味するそうだ。
バスの移入の歴史も日本ほどではないが古く、数十年前から食用として中国に移入されていたという。
釣り場のバスも食べられてしまうんじゃないの?
魚だけでなく、中国の人は「動くものは何でも食べる」「四本足のものはテーブルとイス以外食べてしまう」などと言われることもある。バスを釣って食べる人だっていると考えるのが自然だ。淡水の魚はあまり日常的には食べないが、例えばオフショアの乗り合い船に乗ったら船代だって高いわけだし、絶対お土産を釣って帰りたいと私だって考える。
日本でフナやコイを食べる人は少数派だが、中国では釣って食べるのは普通だという。現地の釣具店や漁具店に行くと、魚を入れるための「スカリ」が大きく、しかもなぜかド派手なことに驚かされる。

だけど、5月に訪れた街にあった湖を散策していると、湖畔の釣り人たちのターゲットはフナのようだったが、ほとんどの人が魚を持ち帰るための「スカリ」を持っていなかった。
もしかしたら、フナ釣りでもただ食べるためだけに釣るのではなく、いわゆる「ゲームフィッシング」の考え方が根付いてきているのかもしれない。

ルアーターゲットは日本より豊富
日本の在来種で肉食魚というとナマズの仲間くらいで、そのナマズも元々は関東や東北には棲息しておらず国内移入種であるとされている。
一方で広大な国土を持つ中国には淡水の肉食魚が多数棲息している。ライギョも現地では在来種で広い範囲に棲息している。ルアーよりもフライの方が人気らしいが、トラウトの釣りも一部のマニアの間で盛んだという。我々日本人に馴染みの薄い種類の淡水のルアーターゲットもいそうだ。

オカッパリのルアーフィッシングが浸透したらすごいことに?
中国でのバスフィッシングは、現状ではまだまだ富裕層の遊びといった感じは否めない。レンタルボート代だって、現地の人の収入からしたらかなり高い。だが、少しずつ一般庶民にもルアーフィッシングが浸透してきているような気配も感じた。

滞在していたホテルの近くの湖、ほとんどの人がノベ竿で釣りをしているなか、1人だけベイトタックルを持ったルアーアングラーがいた。一見、霞ヶ浦あたりでオカッパリをしていてもおかしくなさそうな出で立ちである。
好奇心を抑えられず、中国語などほとんどわからないのに「ニイハオ」と声をかけてみた。すると、「この藻の間でルアーを動かしていると、バイトしてくるんだ」(完全に想像です…)みたいなことを中国語で返してくれた。そのルアーも、フロッグなどではなくトレブルフックのついた小型のクランクだったけど、ルアーアングラーに出会えたことに感動。
日本の10倍以上の人口を抱える中国でバスを始めとしたルアーフィッシングが流行ったら、きっと日本の釣具メーカーも活気づくに違いない。雑誌も、買ってくれたらうれしいんだけど(笑)。

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